同じ敷地内の別の家屋には、家族持ちのMpeta さんが住んでいた。ただ広いだけの家の家政と掃除全般をしてもらっていた。
あの夜、1回目のパニックボタン騒動が起こった時のことだった。警備会社からの質問に対し、メチルアルコールを飲んでいた夜警が見た泥棒は、なんとMpetaさんだったと答えた。何事が起きたのかと眠り眼で敷地奥の住居から出てきたMpetaさんは、夜警の答えを聞いて、突然、今までに聞いたことがないようなとんでもない奇声を上げてオイオイと大声で泣き出した。今まさに目の間で繰り広げられている状況は、自分達の経験値を完全に越えていた。いわば全く理解不能の状態だった。これからどのように事が展開するか全く予測がつかなかった。理屈から考えれば塀の外から入り出て行った泥棒が、敷地内に住んでいるMpetaさんであるはずがない。当たり前に考えればそうだった。しかし、オープンマーケットで身近に売られている「起上り小法師」のようなおもちゃを不思議に感じ、自然にどよめきが上がるような現実が一方にあったのだ。実際の生活で、その「おもちゃの起上り小法師」が存在すること自体に衝撃的な驚きを持った。
少なくともマラウイでこれほど不可解な「アフリカ」を皮膚感覚で感じたことはなかった気がする。
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