春先、暖かくなってくると隣のさくらんぼの果樹園の中を鶏の親子が走り出したものだ。5,6羽のひな鳥が親の鶏を追いかけながらあちらこちらを動きまわっていた。隣の家は、果樹園の中を真っ直ぐ奥まで道路が伸びており、ひっそりと建っていた。ウッドデッキが見え、裏がコロンビア河に面していた。家の玄関側の横に鶏小屋があった。鶏は、好き勝手に出たり入ったりしていた。家の主人と奥さんもたまに見かけることがあった。勤め人のようで、片手間に手間のかからぬさくらんぼ園を経営しているようだった。まだ、小規模の果樹農家の組合が存在していた時代だったので、なんとかやっていけたのかもしれない。さくらんぼの場合、必要な病虫害防除のための薬剤散布や収穫までの肥培管理の期間も短く栽培のための費用も少なくて済んだに違いない。潅水の手間にしても既に敷設されているので潅水パイプの元栓をひねるだけでよかったはずだ。6月の収穫時期は、土日に親戚や友達が来て、別に朝早く始めるわけでもなくワイワイやっているのを見かけたことがあった。
秋になれば、さくらんぼ園と近くの見上げるようなの高さになるポブラの防風林が一斉に紅葉し、みごとな黄色になった。河岸段丘の禿山の茶色と防風林と果樹園が微妙に違った輝色を見せてくれた。美しい絵葉書のような景色だった。それが、目前に広がっていることがとても不思議だった。朝と夕方の光に映える川沿いの景色を一生忘れることはないだろう。
さくらんぼの果樹園に囲まれたこんな家に住めたらいいなと素直に思ったものだった。
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