都会の喧騒を避けるのと通勤の便利さを考え、都営三田線中延周辺で
物件を探した。1986年くらいか。
大田区洗足池の近くのワンルームマンションの1階に住んだ。つまり鉄筋のアパートだった。
当時、「ワンルーム云々」という言葉に対するなんとなく憧れがあった。
壁が薄くない隣の音が聞こえてこないコンクリートでできた建物の1室に住みたいと思った。
就職できたので、少しぐらい生活のレベルを高めてもいいと思った。
祐天寺の仮住まいから引っ越してきたが、荷物はほとんどなかった。
ベッドがなかったので、布団を洋間にひいて寝た。辺りが静かになると
ブーンという機械音が床から直接伝わってきた。
まだ部屋に慣れていなかっただけかもしれない。
初夏の夜、暑いので部屋のあかりを消し、暗くして窓を開けて寝ていた。
眠れなかった。
草を切るような音が繰り返し耳に響いてきた。
アパートの建物の近くで、誰かがゴルフのスイングの練習をしていた様子。
発作的に「うるさい」と叫んだ。スイングの音が急に止むと大声で「誰だ、今言ったのは?」
どこの部屋から苦情を言われたのかわからない様子だった。
ただじゃおかないみたなことをブツブツほざいていた。
布団にくるまって息を殺して気づかれないようにしていた。
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